2016.06.23

  • 人×∞

個展「箱のなかに入っているのはどちらか?」作品解説その3

こんにちは、イシイです。
前々回の個展「箱のなかに入っているのはどちらか?」作品解説その1、前回の個展「箱のなかに入っているのはどちらか?」作品解説その2に続いて、個展タイトルにもなっている最後の作品「箱のなかに入っているのはどちらか?」の紹介と解説です。

「箱のなかに入っているのはどちらか?」

ステートメントでは、

そして最後に出来上がったのが「箱の中に入っているのはどちらか?」でした。外側にいて箱を被っている人を見れば「なんて四角四面な狭いやつ」に見えるかもしれませんが、被っている人は案外広い空間を味わっているかもしれません。真っ暗闇で端が見えない有限の空間は、同じく端が見えない無限に広がっている空間と、言葉の上では同等になります。となると、この一見滑稽に映る箱を被った人たちはそれを見ている外側の人の姿にも置き換わるのではないでしょうか。

と記載していました。

マネキンたちが壁に添い、地面を這い、箱にアタマを突っ込んでいるこの空間は、あたかも実際の人間が存在しているようなハイパーリアル(=虚構でありながら、あたかも実在しているかのよう)な空間になっていて、そのハイパーリアルな空間における「穴」は、虚像の世界と実存世界の皮膜として存在しています。

遮光の処置を施した箱の中はまさに真っ暗闇で、「穴」にアタマを突っ込んでみると境界を認識することができず、外から見て想像してたときよりもずっと広がりを感じます。ではこれが一体なんなのでしょうか。哲学者プラトンの「洞窟の比喩」の話を交えて掘っていきます。

話の中では、洞窟の中で手足を縛られた囚人が住んでいて、火に照らされた「影」のみを見てずっと生きていました。ところが、囚人のひとりが手足の拘束を解かれ、その火を見るように強制されると、火のまぶしさで目がくらみます。が、やがて目が慣れてくると、今度はさらに火の向こうにある洞窟の出口に連れて行かれ、今度は太陽の存在を知り、またそのまぶしさで目がくらみます。そうしてまた目が慣れてくると、その囚人は自分たちが見ていたものはただの「影」(=実在からの投影)だったのだ、ということに気づきます。囚人は洞窟へ戻り、他の囚人にその真実を伝えますが、影の世界のみしかしらない囚人からは「アイツはおかしくなった」と狂ったように扱われ、真実を知らしめようとする囚人を殺してしまう、みたいなお話です。

僕らが生きているこの世界自体も実は虚像あるいは固定概念に囚われた世界で、「穴」にアタマを突っ込んで真実をのぞき、固定概念の枠を飛び越えようとする人をハイパーリアルの空間側から嘲笑うような構図ができあがる。その構図を見ている鑑賞者もハイパーリアル側にいて、その構図を見ている鑑賞者を見ている鑑賞者もハイパーリアル側にいて、と際限がなくなります。 虚像の世界と実存世界の皮膜として登場させた穴を用いて、そんな鑑賞者と体験者が展示物の一部と化してしまうようなインスタレーションにしてみました。

レオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタインなど、現代の最先端科学をもってしてようやく紐解けるようなことに辿り着いていたような人達は、もしかしたらこの虚像世界の穴から真実を覗いていた、「狂った人達」だったのかもしれないなぁ、などと思いを馳せてしまいます。

「箱のなかに入っているのはどちらか?」のギミック

この作品にはテクノロジー要素は取り入れていなくて、「アタマをツッコんだらどこか光ったり、音がしたり、最初からアタマをツッコんでる人の顔が浮かんできたりするのかと思った」と言われたりしましたが、実際には真っ暗闇の箱のなかにアタマを突っ込むのみのインスタレーション作品でした。

「耳のないマウス」の紹介サイトを作ってみた

展示期間中にたくさんの方に来ていただき、興味を持ってもらえたのですが、その場で展示しているもの以外の自分たちの以前の作品などを紹介できるものが手元になく、反面、興味を持ってくれた海外の人達が漏れなく自分の紹介用のチラシだったりサイトだったりを持ってたりしたのを目の当たりにし、なんとなく機会損失している気がしたので、デジタルアーカイブとしてチームの紹介サイトを作ってみました。せっかくなので、なんとなく今まで触れる機会がなかったBootstrapを使って作ってみたのですが、レスポンシブにも容易に対応でき、簡易なサイトを作るにはすごく便利だということに今更ながら気づきました。。

最後に

レセプションパーティーに出席していただいた方々、展示に来ていただいて方々、制作過程などにおいて手伝っていただいた方々含め、皆様のおかげでひとまず無事に3331 Arts Chiyodaでの個展を終えることができました。次回の長野での展示も決まり、これからも「耳のないマウス」チームでの活動を続けていければと思いますので、引き続きご支援の程よろしくお願い致します。

この記事を書いた人 :
イシイ

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